第71回大会ならびに2017-2021年度の総括 前会長 三谷惠子

2021年11月7日


2021年度の日本ロシア文学会全国大会は、去る10月30日、31日に筑波大学を開催校として、オンライン形式で行われました。

大会前日の10月29日には、ソ連崩壊から今日に至る30年の旧ソ連圏の文化と社会をテーマとしたプレシンポジウムが、筑波大学人文社会系(「日本財団中央アジア・日本人材育成プロジェクト」)との共催で実施されました。こちらもオンラインでしたが、YouTubeでの同時配信も含めて、400名の視聴者を集めるという画期的な催しとなりました。プレシンポジウム終了後もYouTube動画を配信し、11月7日現在で延べ720名以上の視聴者数を記録しました。ソ連およびポスト・ソ連の文化・社会に対する関心の大きさを痛感する機会であったと思います。充実した企画を準備してくださった実行委員会ならびに多大なご協力を賜った筑波大学関係者のみなさまに、心から感謝いたします。

30日、31日の大会では、国際参加枠3名を含め、18の個人発表と3つのワークショップが並び、例年に比べるとやや小規模ながら、充実した研究発表が行われました。とくに若手の会員の方々の活躍が目立ち、近年の傾向である研究分野の広がりも改めて感じられました。また、オンラインとはいえ、国際参加枠での参加者があったことは、学会の国際化が着実に進んでいることを示すものだったと言えるでしょう。

オンラインでの開催には、対面での大会とは異なるさまざまな事前の準備や、多くの方々の協力が必要ですが、組織委員会、実行委員会、またオンライン班のみなさんには、昨年の経験をふまえて周到な準備をしていただき、おかげで無事に全日程を終了することができました。

総会では、会長選挙も行われ、二次投票はオンラインとなりました。阿出川修嘉さんを委員長とする選挙管理委員会のみなさんの事前の多岐にわたるご配慮により、アクシデントもなく進行して、中村唯史さんが新会長として選出されました。

上記のとおり、今総会ならびに新会長選出によって、私の4年間の会長任期は終了しました。後半2年間はコロナ禍で、大会がオンライン開催になるなど、予想もしなかった事態に対応しなければなりませんでした。しかしながら、それぞれの年の大会組織委員会、実行委員会を中心にみなさんがご協力くださったおかげで、ヴァーチャル空間上とはいえ、会員が集まり議論を交わす場を絶やすことなく、来年に引き継ぐことができました。また、同じくオンラインとはいえ、他学会との合同シンポジウムも開催し、学会活動を外部に開く試みも行われました。

この4年間は、これまでの学会の慣行や方針を、現状にあわせて修正する作業をさまざまな形で行う時期でもありました。学会をより外部に開かれたものとするため、従来のロシア語教育委員会を拡大改組して、社会連携委員会を設置しました。また、若手の会員の方々の業績作りと学会の活動活性化を狙って、若手ワークショプという取り組みも始めました。2021年度のワークショップは、2022年3月に開催される予定です。さらにこの度、修士課程在籍の方のために学生会員の制度も導入しました。修士課程の段階から学会活動に関心をもってもらい、学会発表などで業績を作っていただこうというのが主たる目的です。

日本ロシア文学会は、支部の連合体といった性格ももっている学会ですが、支部のあり方も見直しの時となりました。すでに学会誌編集委員会については、以前からあった支部選出方式をやめて、他の委員会と同じように、理事会選出としましたが、この背後にあったのは、会員が減少し、活動が徐々に難しくなっている支部がある、という現実でした。さらに今後の見通しを考えると、現在の6支部体制をこのまま維持するのは困難であることも明らかになりました。これを受けて2021年5月に支部連絡会を開催し、今後の支部体制のあり方について検討を始めました。具体的な統廃合の仕方はこれからの課題となりますが、支部会のみに入会していらっしゃる方々も含め、なるべく多くの会員に納得していただける体制に移行できるよう、みなさまのご協力をお願いいたします。

広報委員会からは、新しいHPの提案がありました。これまで事務局が手作業で行ってきた仕事や、懸案であった名簿問題などが、ある程度オンライン上で処理できるといったメリットが期待されますが、いっぽうで導入期には多少の混乱も予想されます。みなさまのご意見を聞きながら、効率の良いHP運営の道を開いていくことが必要となるでしょう。

さまざまな課題を次期の執行部・理事会に引き渡すような形になりましたが、日本ロシア文学会がますます活動の場を広げていくよう、みなさまのさらなるご協力をよろしくお願いいたします。

4年間、多くのお力添えをいただき、ありがとうございました。