第 70 回定例総会・研究発表会と 2019/2020 年の学会をふりかえって

第70回定例総会・研究発表会(大阪大学・オンライン大会)と
2019/2020年の学会をふりかえって

日本ロシア文学会会長 三谷惠子

2020年11月5日

 日本ロシア文学会第70回定例総会・研究発表会は、10月31日、11月1日の2日間、オンラインで開催され、総会およびすべての研究発表を予定どおり終了しました。

 昨年の早稲田大学で行われた総会で、2020年70回大会は大阪大学を会場として開催すると決まり、以後、2020年大会実行員会の皆さんには、会場の下見、予約、プレシンポの計画など、今大会に向けた準備を始めていただいたところでした。しかしながら、今年の春先からの新型コロナウィルス感染症の拡大により、状況が一変しました。

 4月に行われた大会組織委員会・実行委員会合同委員会では、今大会の開催方法そのものが議論されました。その後、さまざまな意見交換を経て、7月の理事会でオンラインによる開催が決まり、同時に、実行委員会の中にオンライン班(班長中村唯史副会長)を設置して対応にあたることになった次第です。Zoomのミーティング形式による全国大会という前例のない事態に向けて、実行委員会・オンライン班、また広報委員会の本田晃子委員長には、8月から入念に準備を進めていただき、大会開催の前には参加者への事前の接続確認や、司会者・発表者との密な連絡も行なわれました。その結果、発表は全体にスムーズに行われ、発表者の研究への熱意がパソコンの画面からじかに伝わってくるような、充実した大会になったと思います。どの会場にも、30人から60人ほどの聴衆が集まり、非会員の参加も各会場に数名見られるなど、予想以上の盛会になったといえるでしょう。実行委員会、オンライン班、また当日に会場係としてご協力くださった会員の皆さんに、お礼申し上げます。

 今年度の学会大賞受賞者である中澤敦夫氏の受賞記念講演も、YouTubeでの公開という、これまでにない形となりましたが、こちらも多くの方々の協力によって実現しました。

 全国大会の意義は、たんに会員が研究発表を行うだけではなく、全国にいる会員が一同に集まって場を共有し、そこで研究者間の交流をより豊かにすることにあるでしょう。その意味で、オンライン発表会は、完全に通常の大会の代わりとはなりませんが、実際の出会いがない代わりに、どこにいても参加できる、移動の時間や交通費が不要、という利点もあり、すでに、来年もオンラインでやってほしいという会員の方の声も出ています。大会をオンライン化することは、全国大会の意義を根本から変えることになり、そのまま実現というわけにはいかないでしょうが、多くの学会や研究会でオンライン形式での講演会やワークショップが行われるようになった今、さまざまな活動や企画にオンライン形式を取り入れることは、今後の本学会の発展のためにも不可避の課題であると考えられます。その意味で、コロナ禍という不幸な出来事が原因であったとはいえ、オンライン開催となった第70回大会は、今後の学会の活動を広げる新たな可能性を示唆する、記念の大会になったと思います。

 2019/2020年の学会にも、いろいろな動きがありました。2020年にはいってからは、新型コロナ感染症のために、学会活動がさまざまな制約を受けましたが、編集委員会のご尽力により、学会誌52号は通常どおりのスケジュールで刊行されました。また、ホームページ上では、会員の皆さんの活発な情報発信が行われています。2020年の総会をもって、4年間事務局を預かってくださった野中進さんの任期が終了しましたが、後任を上智大学の秋山真一さんにお願いし、これからは、安達大輔さんとの二人体制で、学会運営の要である事務局をご担当いただきます。

 このように、多くの皆さんのご協力で着実に実績を積み上げている状況ですが、しかし同時に、本学会が今後の課題として取り組まなくてはならない課題がいくつかあるのもまた事実です。

 すでに会員各位に連絡があった通り、2019年末に発行された会員名簿に複数件の情報記載ミスが指摘されました。皆さんのご協力と、業務委託している勝美印刷の誠意ある対応により、大きな実害はなく、訂正版を作成してお手元に届けることができましたが、この問題は、これからの名簿配布のあり方について考えるきっかけとなりました。個人情報の管理がますます厳格化される世の趨勢、また紙媒体の名簿を多くの学会が廃止している現状の中で、本学会でも、紙媒体の名簿作成をどうするかが、今後の課題となっています。

 研究者コミュニティの縮小、とくに若手研究者の減少は人文系の研究分野が共通して抱える問題ですが、本学会でも、将来的に維持可能な支部体制のあり方や、大学院生、とくに修士課程在学中の学生さんの入会促進など、学会と、会員それぞれの研究領域の今後の持続的な発展のために、対策を真剣に考えるときに来ているように思われます。今後の理事会で具体的な対応を相談して参りますが、皆さんもこうした問題について、各支部へご意見をお寄せください。

 10月31日の総会で、2021年の大会は、筑波大学での開催と決まりました。多くの会員が、コロナ禍の中、現地調査や資料収集ができないなど、不自由な研究状況下にあることと思います。けれどもさまざまな通信手段を用いて資料や情報を得るなど、最大限の工夫によって研究成果を出していただき、来年の大会がそうした成果を互いに公開する、活気ある議論の場となることを祈念いたします。