8月3日-8日には、アジアでは初めてとなる国際中欧・東欧研究協議会(ICCEES)の世界大会が、幕張を舞台に行われ、50カ国から約1300人の参加者を得て、大盛況裡に終了しました。組織委員会のレポートによると、文学・言語・芸術・メディア・哲学・歴史などの人文系だけでも、パネルないしラウンドテーブルの数が総計187にのぼったそうです。組織・準備活動は日本のスラヴ・ユーラシア関連学会の連携で行われましたが、わがロシア文学会も広報や寄付募集などを含め、これに積極的に関与しました。一番大きかったのは人的な関与で、前会長の沼野充義氏が組織委員長の一人として全体を率いたほか、前事務局長の坂庭淳史氏はじめいろいろな世代の沢山の会員が、文字通り献身的に組織運営を支えました。もちろん研究発表や意見交換の場でも多くの会員が活躍しました。
幕張大会の意義や幕張後の学会活動の課題や目標についての議論は、これからもいろいろな機会になされると思いますが、世界の学界との関係を深める契機となったことはもちろん、国内の諸学会の相互認識や連携を強め、日本の社会におけるスラヴ・ロシア研究の認知度を高めたという意味でも、ICCEESは貴重な体験だったと思います。関係した皆様に深く感謝します。
幕張の熱気がようやく冷めかけたこの秋にはまた、ロシア語作家のアレクシエヴィチがノーベル文学賞を受賞するという出来事がありました。現代史と現代社会に深く関わるその作品世界の特徴や、特異な創作スタイルにスポットライトが当たることで、これもまたロシア語文化に対する社会の認識を広げてくれる、記念すべき出来事だったと思います。
学会員の仲間の研究活動からも、同じような熱気の高まりを感じます。この一年、何人もの会員が、きわめて意味深い著書・論文やチャレンジングな翻訳を出版し、また重要な調査・研究プロジェクトを遂行して、教育や普及の場に生かしてきました。
このたび発行された会誌『ロシア語ロシア文学研究』47号も、論文、書評、学会動静の各部分が、それぞれ読者に強い刺激を与え、いろいろな反応を喚起するデザインになっていると思います。たんに自説を展開するのではなく、他者の研究を解釈し、評価する行為から新しい視点が生まれてくるという、相互性や共同性のメカニズムが生きているのが感じられます。とりわけ書評の充実には刮目すべきものがあります。
執筆陣と編集陣のご努力のおかげで、今号は400頁を超える重厚な学術誌となったわけで、これに象徴される学会員の研究活動の盛況をよろこび、感謝したいと思います。
そうした熱気の中で、11月7日8日の両日、美しい秋の木立の中の埼玉大学で、第65回日本ロシア文学会大会が行われました。研究報告会は、10ブロック、29報告、2企画パネルから構成され、それぞれの会場で活発な議論が交わされました。研究報告会の内容については、本ホームページの関連記事をご参照ください。7日午後にはまた、第2回ロシア文学会大賞受賞者の吉岡ゆきさんによる受賞記念講演も行われました。一般にも公開された結果、埼玉大学総合研究棟1階シアター教室が満員になる盛況で、モスクワでの少女期の言語体験にまつわる大変詳細克明なお話を、皆で満喫しました。
今年は役員等の改選期に当たり、総会では副会長をはじめ、新しい理事・役員・諸委員会委員の承認が行われました。2年間学会活動を支えてくださった前任の方々に心から感謝するとともに、新任の方々の今後のご尽力をお願い申し上げます。
おかげさまで今年もわれわれの学会は、メインイヴェントの大会を無事終えることができました。大会組織委員、実行委員の皆様、開催校の皆様に、深く感謝申し上げます。なお、来年度の第66回大会は、北海道大学で行われる予定です。
望月哲男
2015年11月
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